顧客は自分の話を聞いてくれるヒトを「いい人だ」と感じます。一方で、気に入らないことがあると、ほとんどの顧客は黙って二度と来なくなります。顧客が継続して購入をして下さるか否かは、企業の収益に大きな影響を与えますので、顧客コミュニケーションは経営にとって最も重要な関心事となります。まずは、顧客とのコミュニケーション時間を増やすことです。1回の時間は短くて良いので、顧客の邪魔にならない手段を使って回数を積み重ねます。回数を積み重ねるためには、そのつど新鮮な話題を提供する工夫が必要です。
コミュニケーション時間=1回の時間×回数 |
マネジメントの生みの親と言われる経済学者ピーター・ドラッガーは、その著作で、「強みは顧客が定義する。」と言っています。企業の強みと顧客価値が合致することによってビジネス(商取引)が成立します。
また、顧客には必ず「慣れ」や「飽き」という心理がおこります。よって、顧客を維持するためには、顧客が評価している点(自社の強み)を伸ばし続ける必要があります。
強みを伸ばすためには投資が必要ですが、思いつく事すべてに投資していては資金も人材も足りません。よって投資先を選択し集中しなければなりません。これが「戦略」です。
「選択」と「集中」
現代における経営は、「顧客価値」が最も重要な指標になります。
顧客価値を損ねている原因は、顧客の視点でなければ見つけられません。
よって、問題点を経営者の視点だけで解決しようとすることには危険が伴います。
時とともに経営者が顧客の気持ちを忘れてしまったり、時代とともに顧客の感覚やライフスタイルが変わってしまうからです。
かつてダイエーの中内社長は現場を周り、自分の目でみて、自分の感覚で指示を出し続けました。一方、ウォルマートのサム・ウォルトン社長は現場を周り、お客様と話し、尋ね、顧客の真意に沿って改善させました。
顧客の視点で改善する
新規客獲得戦略を考えるときに、ターゲットを大きな集団でとらえてしまう傾向が見られますが、これは間違いです。
大きな集団で考えると、顧客へのメッセージは「日本人は・・」「子供は・・」などというセリフになってしまいます。
しかし大きな集団として呼びかけられても、メッセージの受け手は、自分の事を言っていると気づかなかったり、自分のために提案してくれていると感じなかったりします。
渋谷の交差点、人混みの中で、「そこの若者たち!」と叫んでも、誰も振り向かないのです。「使い捨てコンタクトを使っている、週末ランナーのあなた!」と叫ぶと、あてはまる人が振り返ります。
「そこの若者~」
情報過多の時代です。周りを見渡してください。
今まで気づかなかった沢山の広告(文字や画像)があります。この沢山の広告のうち、皆さんはいくつに気づいたでしょうか。
以前に何度か目に触れて気になっている言葉や、よく仕事で見る言葉は目につきやすいのですが、そうでないと気づかないのです。
つまり、顧客の言葉を使ってパンフレットやホームページを作らないと読んでもらえないということです。伝えたいターゲットだけが知っている言葉にも思わぬ効果があります。例えば「ユンボー」(一般にはショベルカー)は、建設業の人の目を引きます。
また、海外に行ったときは、多くの音の中から日本語だけが耳に飛び込んでくるものです。
伝えたいターゲットが知っている言葉で
現代ではテレビやラジオに加え、インターネットやSNSなど様々なメディアが存在するため、ターゲット層に合った手法でPRすることが必要です。
たとえば、テレビの深夜枠に50〜60代⼥性向けの広告を出しても⾒られません。
この世代は日中のテレビ視聴がほとんどで、深夜はテレビを見ないからです。
テレビの場合は、つけっぱなしだが見られていない、という傾向もあります。なので、気づかせるためには印象的な音楽などが必要になります。
「安くなければ売れない。」は、本当にそうでしょうか?イトーヨーカ堂で18,000円と58,000円の羽毛布団を販売したところ58,000円のものはあまり売れませんでしたが、そこに38,000円の羽毛布団を加えて販売すると58,000円のものが一番売れた、という事があったそうです。
どう説明したらよいでしょう?正しい価値を理解して「お得」「リーズナブル」という心理がおこると、高価格でも人は喜んで購買をするようです。
安いものと高いものを用意した場合、一定の割合で必ず高いほうを買う人が出てくるのです。高価格帯の商品を出すと、加重平均をとった場合の粗利は必ず大きくなります。
「高い」「お得!」
「ポテトはいかがですか?」マクドナルドでハンバーガーを買ったときに聞かれる有名なセリフですね。Amazonで本を買ったときも、「この本を買った人は、こんな本も一緒に買っていますよ」と、お勧めコメントが出てきます。これで顧客単価が上がるのです。顧客は目的を持って購買行動をします。その目的を満たすため、他の会社から他の部品や道具、付属品を買っていませんか?
今一度よく考えてみましょう。かつてウォルマートは、金曜日に紙おむつを買う男性は缶ビールを一緒に買う、という傾向を発見しました。どちらも週末を家族と楽しく過ごすための必需品だったのでしょう。
新規顧客を獲得するコストと比べると、顧客を維持するためのコストは1/5と言われています。既存顧客による売上は、1回あたりの購入額×購入頻度という数式で表すことが出来ますので、購入頻度を上げることは利益増のために有効な手段です。
たとえば、頻度が「1ヶ月半」の購買があったとします。
しかし、正確に45日に一度でなくてもよい場合、感覚的には5日早くても5日遅くても大して変わりはありません。
この頻度の違いは、固定費が変わらないのに、売上25%増(または20%減)という影響を及ぼします。